(第27回)日本株の基礎的状況


第1四半期の決算発表があらかた終了し、日経新聞の集計では、経常利益で前年同期比15%の増益になったと報じられました。電機が69.5%、商社が45.6%の高い伸びを示し、全体を牽引しています。ほとんどの企業が通期の予想数字を据え置いたものの、今後増額修正が続出するのは必至と見られ、主要調査機関は、通期の増益率は会社期初予想の2%を上回り、10〜16%になると予想しています。


7日終値現在、日経平均採用225銘柄の平均PERは、18.67倍と日経新聞に表示されています。算出の基になる予想1株利益は現在811.7円で、この数字は原則的に上場会社自身の発表する予想数字に基づくものです。
仮にこの数字が10%増額修正され、893円になれば、PERは16.97倍に低下します。もしPER20倍に買われた場合、日経平均は17,860円となります。(便宜上日経平均で論じていますが、東証1部全体で考えてもほぼ同じことがいえます)
03年の大底時以降、日本株の平均PERは16倍台を底として、おおむね20±2倍程度で推移しています。では、現在の日経平均の適正水準は、たとえば17,860円だといえるのでしょうか?


日々の相場の中で、PERが高くなったり低くなったりする要因は、大きく分けて次の2つです。
1つは、金利要因。ご承知のとおり、米国ではこれが大きく作用して日々の相場を動かしています。しかし、日本の場合は、これまでゼロ金利政策の中で、株価と対比される長期金利の上昇は限定的でした。今後についても、イールドスプレッド(株式益回り/長期金利)の国際比較で、日本株は相当に割安であることから、国内の金利上昇にはある程度の弾力性を持っているはずです。すなわち、多少の金利上昇なら、日本株に対するリスクプレミアムの減少という形で、金利上昇分が吸収され、PERの中心線は20倍程度を維持することが十分に考えられます。
もう1つの要因は、業績あるいは景気の先行きに対しての市場のセンチメントです。
以下は、この要因をより端的に投資マインドと言い換えます。
PERが金利要因ではなく投資マインドの悪化によって低下するとき、大きく分けると、2つの状態に分類されます。
1つは、ITバブルがはじけた2000年が典型ですが、現在の利益水準がピークに近いという投資家の冷静な認識が株価に織り込まれたときです。
もう1つは、2003年4月の日経平均大底時が典型ですが、極端な不安心理により、経済合理性を無視して将来が悲観されたときです。


問題は、現在の株価状況をそのいずれの状態に近いと考えるかです。すなわち、本来の日本株のPERの中心線である20倍を下回って実質的に17倍に評価されている原因について、業績のピークが近いという合理的な観察に基づくものであると考えるか、それとも心理的なぶれによるものと考えるかです。
現在、国内経済だけで見た場合、本質的な懸念材料は少なく、企業業績の最大の懸念材料は、景気拡大がすでに史上最長の期間に達しつつあるということです。投資家の多くは、景気拡大と企業業績の連続増益の持続に強い不安を感じています。
ただし、①史上最長のいざなぎ景気がピークを打った70年の株価調整と同じ規模の下げは今回すでに実現していること、②現在の日本経済が後追いしている米国経済は、90年代にはほとんど景気後退局面がなかったこと、③最新の報道では、大企業経営者の44%が景気はまだ1年以上持続するという強気意見を持っていることなどを考えると、単純に景気拡大の期間や連続増益の年数に神経質になることは、実際にはあまり大きな意味がないと考えられます。
したがって、国内経済には不安の合理的な根拠が見当たらず、焦点は、国際的な要因、端的には米国発の世界景気減速があるかないかに絞られるはずです。


米国の景気と株価の考察については次項に譲ります。日本株と米国株との関係でいえば、いろいろな局面があり、無相関のときや、逆相関のときや、完全連動のときがあります。現段階は、投資家のマインドを決定する上で、米国の景気に対するセンチメント、ひいては米国のハイテク株の動向が大きな鍵を握っているといえます。
私見では、日本株は上昇の基礎的要因を備えており、米国株の陽転が見られた場合、投資マインドが回復し、4月高値に迫るような中間反騰が実現すると考えます。