(第38回)いまの株価位置は?


10月が堅調な展開で終ろうとしています。今月は当初、弱気の見方が多く、中には神懸り的な悲観論を述べる人もいました。
日本株は74年、82年、90年、98年と8年おきに10月に壮絶な安値をつけている。だから、今年も急落する、という著名チャーチストの意見がそれです。
8年おきはともかく、10月は米国でブラックマンデーが起きた月であり、投資家心理や需給関係に亀裂が生じやすい季節性があるのかもしれません。10〜11月に買って翌年1〜2月に売れば得する可能性が高いというアノマリーが日米双方の株式市場で指摘されています。
その10月が堅調に終ろうとしているのですから、投資家のマインドが好転しているかと思いきや、なかなかそうではありません。少なからぬ投資家が、いまもなお強気でも弱気でもない五里霧中の気分に嵌まり込んでいるようです。


投資家の気分をあいまい模糊なものにしている最大の要因は、相場位置に対する認識の混乱です。
いま高値警戒心を抱かせる指標は、史上最高値を更新したNYダウと史上最長に並ぼうとしている国内景気の持続期間などです。加えて、日本の大型優良株もかなりの水準まで買われ、高値更新する銘柄が出てきました。 
一方、安いと感じさせる指標は、なんといっても新興市場をはじめとする小型株の水準と9ヵ月に及ぶ下げ期間です。
通常なら、高いものに警戒し、安いものに期待するのが一般的な投資家の心理です。しかし、いまはかなり多くの人が、NYダウ採用の30銘柄に象徴されるような大型優良株の相場が続く限り、小型株の本格的な出番はないという懸念を抱いています。
したがって、高いものは危なそうだが、安いものはますます危なそうで手が出ない。では弱気かというと、高いものは内容を伴っているので弱気になるほどでもなく、安いものもここまで下げれば弱気になれない、という八方ふさがりといってもよい状況認識に陥っている人が多いと思われます。


冷静に考えて、いまの相場水準は高いのでしょうか、安いのでしょうか?
第1部の平均株価でいえば、日経平均1万6千円台は、3年半前の安値から2倍以上の水準ですが、だから高い、危ないと感じる人は少数のはずです。一般的にいえば、1万7千円台の4月高値から6ヵ月が経過したことで調整一巡感がある反面、1万4千円台の6月安値からの距離に不安を感じている人も多く、どっちつかずの位置と感じている人がほとんどでしょう。
一方、新興市場の指数は、ジャスッダクは去年夏の水準、ヘラクレスは2年前、マザーズは3年前の水準で、まさに往って来いの状況です。加えてPERも、ジャスッダク平均で22倍とリーズナブルな水準に低下しています。しかし、多くの投資家は、まだ安心できる位置ではないと感じています。その根底には、ライブドア摘発を契機として鮮明化した新興企業の経営そのものに対する不安と疑念がありましょう。


このような、株価位置に対するどっちつかずの認識に、11月中にも激変が起こる可能性があります。
まず日経平均については、この春に上値を阻んだのは、24倍台に達したPER水準に対する警戒感でしたが、NYダウの上昇により、大型優良株についてはPER25倍(益回り4%)が国際的にも投資許容範囲になりつつあります。加えて、これから発表される中間決算で、日経平均の予想1株利益が上昇することを考えれば、4月高値の17,563円を超えることはPER21倍で可能であり、もはや尻込みするような上値の壁ではなくなっていくはずです。
次に、新興企業に対する最大の不安要因は、会計監査の厳格化だったわけですが、その不安は今回の中間決算で正念場を迎えます。先週は、8月決算のUSENとインデックスが、会計基準の厳格適用による大幅な評価損の発生を相次いで発表したものの、ショック安はきわめて一時的なものに止まりました。ともに高値から4分の1以下になった株価が悪材料をすでに織り込んでいたと見られます。
すなわち、ここ1ヵ月のうちに、大型優良株と小型成長株の両極で、株価位置に対する投資家の意識が大きく変化する可能性が高いと私は考えます。ただし、この見解は、先週申し上げた「大型株の上値が重くなり、小型株の上値が軽くなる形で、本来のリスク・リターンの関係が回復するはず」という、小型株優位の考え方を修正するものではありません。