(第39回)粉飾決算


先週、ジャスダック上場のユニコ・コーポレーションという銘柄(8569)が会社更正法を申請しました。
8月9日に不適切な会計処理が判明し監理ポスト入りとなったあと、9月25日には粉飾額が大幅であることが判明、債務超過のため上場廃止になることが決定していたものです。したがって、先週の段階では寝耳に水のニュースではなかったとはいえ、企業の会計に対する不安と粉飾決算の怖さを示す出来事でした。
この銘柄は、直近の決算では、1株利益67円、1株純資産797円、配当15円ですから、株価が930円程度で推移していたのも不思議ではありません。過去の業績も安定しており、堅実なよい会社だと思い投資した人も多いでしょう。
それがある日突然、その数字は過去5年間にわたって嘘だったと報じられ、797円あるはずの純資産が実はマイナスだったと宣告されるのですから、そのショックは小さいものであるはずがありません。私自身も昔、帳簿1株純資産3000円近くで株価3000円の店頭銘柄が突然ゼロになり、資産を失った経験があります。


投資家にとって排除すべき悪は、インサイダー取引粉飾決算です。市場人気を重視して売買する人にとっては、インサイダー取引がもっとも腹の立つ犯罪でしょうが、私のようにファンダメンタルズを重視するタイプには、もっとも腹が立つのは粉飾です。粉飾は、その会社について一生懸命調べたことがまったく無意味になるというより、むしろエサに食いついたダボはぜに帰するのですから、投資家のまじめな気持ちを踏みにじるものとして絶対に許せなく思います。
先週、たまたま米国で、巨額粉飾を引起したエンロンのCEOに対する地裁判決が出ましたが、なんと禁固24年4ヵ月に加え、罰金4500万ドル(50数億円)という厳しいものでした。事業を失敗した人間には何度でも挑戦の機会を与えるが、不正を犯した人間には厳罰で臨むというルールが、米国社会ではますます確立しつつあるようです。それに対して日本では、不正会計に対する罰則は、もっとも厳しい罰則でも5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金にすぎません。
ライブドア事件堀江被告は、粉飾にどのくらい関わっていたか現時点では定かではありませんが、企業として明らかに意図的な粉飾が行われ、投資家が愚弄された以上、複数の責任者に懲役5年の実刑判決が出ても少ないくらいだと思います。


ところで、ライブドア事件をきっかけに稀にみる下げを現出した新興市場では、そのあとも冒頭のユニコに限らず、企業会計における不祥事が相次ぎ、一時は新興企業全体に対する会計不信に発展していましたが、ここにきてようやく一定程度の安心感が戻りつつあるようです。
安心感が回復にむかったきっかけの1つは、USENとインデックスが大幅な評価損計上を発表したものの、その後の両社の株価が堅調であることです。M&Aで急成長したIT関連企業の財務内容に対しては、強い不安感が渦巻いていました。
買収した会社をどう評価するかは、粉飾決算の問題ではなく、会計基準の運用の問題です。USENの場合で見れば、度重ねての評価損計上になったものの、今回でかなり保守的な評価になり、宇野社長の言葉を借りるまでもなく、今後は解釈の違いで大幅な評価損が発生することはなさそうといえます。
両社の場合のように、粉飾決算で倒産するのでない限り、どんな悪材料も出尽くせば、もはや売る材料ではなくなります。収益環境で見ても、たまたまIT関連銘柄のかなり多くで、収益の悪化する例が相次いでおり、足元の収益では楽観できませんが、いまが最悪期と見られる企業も多く、本来なら、楽観的に将来の成長を買おうとするエネルギーがもっともっと回復してよいはずです。


買いエネルギーという点では、再びユニコの話に戻りますが、会社更正法申請を発表した当日、前日の98円に対して一時79円まで売られたあと、終わりは逆にストップ高の128円に買われ、次の日は143円まで上昇しました。
1ヵ月後に上場廃止、かつ債務超過が確実である以上、仮に会社が再建されても現株主には恩恵がないという状況の中での、理屈無視の短期勝負です。
理論価格0円の銘柄に投機人気が集まるのは、いまの相場状況では、普通の銘柄には理論価格0円の銘柄よりも投資魅力がないと考えている人が少なからず存在していることを示しています。少ない資金での局部の現象とはいえ、現在をよい投資機会と考えている私には、非常に残念なことです。