(第26回)転換点の考察


日本株相場のもっとも大きな転換点は、90年1月4日です。この日を境にして、日経平均38,915円を高値とする日本株の凋落が始まりました。
一方、日経平均が7,607円の安値をつけた03年4月28日は、現時点ではその歴史的な意味が確定していないものの、今後時間の経過とともに、90年に匹敵する経済トレンドの転換点だったという認識が一般化していくと思われます。
その2つの転換点以外にも、我々は様々な転換点に遭遇しています。昨年の上昇相場は、起点は5月17日の日経平均安値10,825円ですが、実質的な転換点は日経平均が1万2千円の壁を抜けた8月10日でした。この日以降、出来高を伴って上昇が加速し、夏枯れという常識的な通念が相場に通用しないことを如実に示したのです。
(私事ながら、私が証券会社に退職願いを出したのはまさにこの日ですから、相場と別の事情があったとはいえ、タイミングの悪さを自分ながら笑ってしまいます)


さて、昨年8月からの上昇がいつ屈折したかということでは、見方が大きく分かれます。東証2部や新興市場の高値は、ライブドア・ショックの前日の1月16日です。東証1部単純平均の高値は2月7日です。日経平均とTOPIXの高値は4月7日で、戻り高値は5月8日です。米欧と新興国株価指数の高値は5月10日です。
つまり、世界的な株価調整が始まったのは5月ですが、日本の新興市場株は1月から、第1部の中小型株は2月から深刻な調整がすでに始まっています。また、米国のハイテク株で見ても、半導体株指数(SOX)の高値は1月27日であり、以後の下落は、日本の小型株とほぼ轍をともにします。これらを総合して大きく分類すれば、いわゆるグロース(成長期待)系の銘柄は1月にピークを打ち、インドなど新興国の株価と先進国の在来大型系銘柄が5月にピークを打ったと考えられます。
したがって、調整のあとに今後来るはずの反転も、その2つのグループで、反転の仕方やその後の展開に違いが生じる可能性を考慮しておくべきでしょう。


今後来るはずの反転は、歴史的にどういう意味を持つものになるでしょうか?
まず期待されるのは、日米の業績相場の開始を示す強い上昇ですが、日本株の場合は、いきなりには本格上昇を期待しにくい状況にあります。
日本株は、日経平均で見た場合、03年4月から翌年4月にかけて上昇の第1ラウンド、その後1年強休み、起点としては昨年5月から1年近く上昇し第2ラウンドを形成しました。相場リズムからは、1年規模の足踏みがあったほうが自然です。
したがって、日本株にとってもっとも現実的に考えられる反転の性格は、1月もしくは5月からの下げに対する底打ち反転を決定づける意味での中間反騰です。
今回との単純な比較は危険ですが、03年からの上昇が04年4月に日経平均1万2千円強で天井をつけたあと、5月に10,505円の安値をつけ、7月には1万2千円に肉薄、その後1年間はこのゾーン内で下値を切り上げながら推移しました。
今回も、当面の反転の最大意義は、日経平均の6月13日の安値14,218円が、本格上昇が始まるまでの最安値として投資家に強く意識されることだと考えられます。


では、次の反転局面で、上記2つのグループでどんな違いが出るでしょうか?
この点では大きく意見が分かれるところでしょう。私見では、次の反転は、5月時点における世界株高の様相の単純なリフレインにはならないと考えます。つまり、在来大型系銘柄の主導にならず、かねてから主張しているとおり、ハイテク系銘柄が牽引する相場にならざるをえないと考えます。
半導体などハイテク製品の需給の先行きには、漠然とした不安感が漂っています。しかし、それは製品需給の厳密な考察に基づくものではなく、漠然としている点で景気の先行きへの不安とほぼ同じです。しかし、もしハイテク製品の需給が悪化するような景気停滞があるとすれば、自動車や住宅も不振になるでしょうし、鉄鋼・化学など素材はもとより、石油や非鉄も好調を持続し続けることはできないはずです。


次の業績相場への鍵は、もはや金利ではなく、景気と業績へのマインドです。
世界経済が健全な進行をたどっているものである限り、グロース系銘柄に対するマインドの復活から、日米のハイテク株と新興市場株に強い動きが現われ、相場全体に一定程度の明るさが顕在化する日が近いと考えます。