(第22回)買うに適した時期はいつか?


今年前半の6ヵ月が過ぎました。日経平均で見れば、去年の終値が16,111円で、その下げ率は数%でしかありません。しかし、個人投資家の持ち株で見れば、半値以下に落ちた銘柄も珍しくなく、数年に一度の悪環境でした。
投資成績は、銘柄選択もさることながら、投資時期によって大きく変動します。願わくば、高いときには手をすかせ、安くなってから買い出動したいとだれもが考えているにもかかわらず、現実はおうおうにして逆です。
多くの投資家が、去年のいまごろの徐行運転から、今年の初めには全速運転に転じてしまいました。特に、信用をやっている人は、持ち株の値上がりで担保価値が高まり、安いときの何倍もの株を買い込み、追い証に苦しんだ人も少なくありません。


買わなければよかったと悔やみたくなります。私の場合は、投資顧問業を始めたタイミングの悪さを悔やみたくなります。しかし、後悔はさておき、大切な問題は今後をどうするかです。ほんとうに成功をなしとげる投資家は、成功ばかりをし続ける人ではありません。長い間には、村上ファンドをほんの一例とする様々な栄光と衰退を見せつけられました。一時の成功失敗ではなく、失敗したときにどう対処し、次にどうつなぐかに、ほんとうに成功できるかどうかの鍵があると痛感しています。
最終的に成功できないパターンの第1は、失敗したにもかかわらず、意地になってどんどんお金をつぎ込むことです。第2に、上がると強気になり、下がると弱気になるというふうに、株価の動きに感情を追随させてしまうことです。
最終的に成功をえるパターンは、その逆で、まず第1に失敗したとき潔く撤退することです。第2に冷静な判断力を保ち、人が弱気のときに強気になれることです。
これらを現在の状況にあてはめた場合、いま強気を持続することが悪いパターンの第1に該当するのか、それとも成功パターンの第2に該当するのか、またいま弱気に転換することが成功パターンの第1に該当するのか、それとも悪いパターンの第2に該当するのかは、一概にいえません。
私自身は、次に述べるように、いまこそ強気でありたいと思いますが、ある投資家が自分自身の判断で縮小撤退を決断するなら、それはそれで当面の結果の如何にかかわらず、長い眼では成功に至る身の処し方だと考えます。


私は以下の理由により、いまこそ投資時期としてよい条件にあり、強気でありたいと判断しています。
第1に、現在の市場には少なくとも強気が充満していません。今年後半の相場について、たいていの人が、大きな下げのあとだから難しい局面が続くと考え、慎重な姿勢になっています。
第2に、日米ともに金利上昇という難材料があるものの、経済がひっくり返るような険悪なまでの懸念は限定的です。数年前までと違い、金融パニックや国際的な経済危機が起こることを深刻に心配し、いちかばちかの気分になる必要はありません。
第3に、企業の足元の業績および当面の見通しにおいて、現在のPER水準には一定の安心感があります。業績が不測の事態で悪化する心配はありますが、その心配はつねにあるもので、いまが特に心配な時期というわけではありません。


相場の様々な局面で、どう身の処していくかは人それぞれであり、表題に掲げた「買うに適した時期」についても、いろいろな考え方があります。
慎重な考えをする投資家は、上げ基調がはっきりしてからのほうが、安心して投資できると考えるでしょう。短期的な売買を好む人にとっては、さらに進んで爛熟した相場のほうが値動きが激しくてよいということになりましょう。
現在のような大幅下落のあとの相場調整期は、トレンドがほとんどなく、投資しても短期的には胸のすく成果を出すのが難しい時期です。しかし、心底から納得できる銘柄を選び、希望する株価水準で比較的に安心して投資できるという点では、いまほど「買うに適した時期」はないと私は考えます。