(第15回)浮かぶ株と沈む株


株価が急落し、いま多くの投資家が自分の買った株を持ち続けることに不安を感じています。信用取引はいうまでもなく、現物の場合でもそうです。
不安をもたらす根本的な原因は、平均株価の位置にあります。
日経平均は、過去3年間で2.3倍、この1年間では1.6倍に上昇しました。だから、天井打ちを当然警戒しなければなりません。
もし上げの反動で本格的な下げ相場が来たら、自分の持ち株はどうなるのか? ただでさえ個人好みの銘柄の多くは急落しており、心細い状態です。ますます買いが入らなくなり、株価が崩落していくのではないかと心配になります。


実は、心配している人が多いときは、反落しても大きな下げにならないという経験則があります。しかし、本格的な下げ相場のリスクは可能性としては十分にあるので、多分大丈夫というくらいでは、解決になりません。
だからいっそ、本格的な下げ相場が来たら、自分の持ち株はどうなるのかということを考えたほうが、心配の解決に近づきます。
平均株価が大幅に下落したら、自分の持ち株もやはりさらに下落すると考えなければなりません。問題は下落したあとをどう考えるかです。
日本株がまた90年代のような長期低落時代を迎えると考える人は稀でしょう。深刻に考えても3年間の上げの反動で、調整幅と期間はその半分程度、普通に考えればこの1年間の上げの反動で、調整幅と期間はやはりその半分程度、すなわち期間は半年、日経平均で1万4000円強ということになります。
次に大きな問題は、相場が下げ止まったあと、自分の持ち株がどうなるかです。すなわち、自分の持ち株が再び浮かび上がることがあるかどうかです。


銘柄の人気はつねに栄枯盛衰しており、やや時間を置けば沈んだ銘柄でもまた浮かぶチャンスがあるといえます。しかし、やみくもに我慢して持ち続ければ必ず報われるわけでもありません。自分の買い値に10年たっても戻らない場合があります。例えば、19年前にNTTを300万円で買った人や255万円の売り出しに応じた人は、結果論でいえば、半値のときでも、3分の1のときでも、損切りが賢明な選択でした。
NTTのような失敗をしないために、考えるべきことは、自分の持ち株が今後も下がるとしたら、何ゆえに沈んでいくのかということです。


株価が沈む要因に2通りあります。1つは人気の剥げ落ち、1つはファンダメンタルズ(基礎的な条件)の悪化です。
まず人気要因。自分の買ったときの株価が滅多にないほどの異常人気によって形成されていたか、それとも普通程度の人気だったかどうかです。私見では、普通の人気は循環します。人気が離散しても、2〜3年のうちには復元することがつねです。典型的な例では、防毒マスクの重松製作所です。テロがおさまり、人気離散していたところ、昨年はアスベスト問題で再び人気化しました。
次にファンダメンタルズ要因。こちらも、悪化が根本的なものか、それとも循環的なものか区別することが大切です。減益になれば株価は下がりますが、よほど悪質な要因による減益でない限り、次期に回復する可能性がかなりあります。ソニーやNECのように構造的な業績不振の場合でさえも、通常は2〜3年で悪化に歯止めがかかり、株価はそれよりも早く底打ちします。
すなわち、人気の剥げ落ちにしろ、ファンダメンタルズの悪化にしろ、眼前の株価が示すほどには悲観しなくてよい場合がほとんどです。むしろ、NTTの場合のように、下げにたかをくくっている人が多く、株価も狼狽したような下落を示さないときこそ、かえって深刻な結果につながるケースが多いとさえいえます。


申し上げたいことは、相場が不安定な状態に突入したいま、相場の最悪状態を想定した上で、もしものときは最悪2〜3年間持ち続ける覚悟のできる銘柄に特化したいということです。その覚悟のできる銘柄と期待の度合いは、人によって違うのが当然ですが、私見ではファンダメンタルズ要因だけから見ても、上場企業の2社に1社は、持ち続けるだけの投資価値があり、中でも投資価値を特に強く確信できる銘柄は、万一さらに突っ込んでも、浮かび上がるのは意外に早いと考えます。