(第14回)なんのために株を買うのか?


この表題は愚問と思われるかもしれません。特殊な場合を除いて、たいていの人が儲けるために株を買うのは当然です。
ただし、儲けの目指し方にいろいろあります。短期売買で稼ごうとする人もいれば、じっくり持ち続ける人もいます。様々な投資スタイルがある中で、自分自身の投資の原点をはっきり認識しておく必要があると思うのです。
例えば、年初にソフトバンクに代表される個人好みの銘柄に期待して投資した人は、いましびれています。私も黒田電気双日などでしびれています。
このようなとき、大切なことは、原点に立ち帰ることです。
すなわち、①自分はどんな投資スタイルを採ろうとしていたのか? ②それでよいのか? ③そのうえで自分はいまどうすべきか? ということです。


自分の投資スタイルを振り返るとき、まずはっきりしなくてはならないのは、自分が株主になるために株を買おうとしているのか、それとも時流や人気の波を利用して値ざやを稼ごうとしているのか、ということです。
いちばんの不幸は、株主になりたくない銘柄なのに、売却損を出したくないという理由で株主になることです。あるいは逆に、株主でいたかったのに、一時の気の迷いで手放してしまい、あとあとまで悔やみ続けることです。
ただし、実は、株主になることと値ざや稼ぎをすることの区別は、思いのほか曖昧で、よく考えれば考えるほど、自分がそのどちらを求めているのか簡単に言い切れない場合が多いと思います。私自身もそうです。


理論的には、整備された市場には、純粋な売り手と買い手の他に、本質的には売り手でも買い手でもない、純粋に値ざや稼ぎだけを目的とする市場参加者(裁定取引家)が存在します。しかし、株式市場の場合、純粋な買い手と裁定取引家の区別は明確ではありません。
例えば、村上ファンドは、最終的には転売による値ざや稼ぎを目的としている裁定取引家であるはずです。しかし、阪神電鉄の場合のように、しばしば株主として積極的に発言しており、単なるアウトサイダーではありません。
では、投資信託のように、純投資を目的とするファンドの場合はどうでしょうか? こちらも最終的には、転売によるキャピタルゲインの獲得を目的としています。ただし、年金基金や生損保の資金は、満期がないので、トヨタや日立、新日鉄など代表的な銘柄への投資は、事実上、売却を目的にしていない場合もあります。
外人投資家の場合も一概に言えません。銘柄間の裁定取引を得意とするヘッジファンドがいたり、国産分散投資で永続保有を前提とする年金がいたりもしますが、そのどちらにもあてはまらない投資家も多いはずです。


これを読んでくださっている方の投資スタイルも様々だと思います。ただし、おそらくは、純粋に値ざや稼ぎに徹しているデイ・トレーダーの読者はほとんどいないでしょうし、買ったきり売らないというスタイルの方も少数でしょう。
つまり、私も含めて読者の多くが、大きく分ければ、そのどちらでもない中間的な投資スタイルを採っているといることになります。
中間的な投資スタイルは、中間ゆえ迷いがつき物とはいえ、多くの方がいまは特に気迷う時期にさしかかっているはずです。
先進国の株高基調はいまのところ、個人好みの銘柄には追い風になっていません。個別の決算発表でよい結果が出るかどうかも定かではありません。昨年末から年初にかけて急増した信用買い残高の重圧が次第に意識され始めます。


私見では、気迷いを解決する鍵は1つしかありません。人気を気にせず投資価値を買う立場に徹することができるかどうかです。
株主になりたくない株は売るべきです。
株主になってもよいと思う銘柄なら、信念を持って持続すべきです。信用取引であれば、クロスして継続すべきです。企業の事業環境は良好だからです。
言い足りませんが、いま考えるべきはその一点だと思います。