(臨時)双日の優先株買い入れについて


昨日の大引け後、決算発表と一緒に、優先株の一括買い入れが発表されました。ほぼ日経新聞の報道どおりの内容ですが、優先株保有するすべての金融機関と契約が締結済みということで、曖昧さはまったくなくなりました。
内容はおよそ次の通りです。
1.優先株5760億円のうち、5604億円を3429億円(端数省略)もしくは3541億円で買い入れる。(後者の金額は買い入れが来年10月以降に延びた場合)
2.残り156億円は、リーマンの30億円とみずほ、りそなが昨年買い入れを拒否した126億円で、これらが普通株に転換された場合、合計5200万株の発行株数増加。
3.買い入れ原資として、5月25日に、野村が3,000億円のMSCBを引き受ける。この転換価格は、最初は5月9日の終値もしくは他の基準でそれよりも高く決まるが、6月以降は毎月、基準時価の90%の価格に修正される。
4.転換金額に応じて優先株を徐々に買い入れる。
5.転換原資では不足する分に対応するため、減資を実施。(名目的な手続き)
 

5604億円の優先株を3500億円前後で買い入れることができたのは、04年発行のUFJ引き受け分3300億円が大幅なディスカウントになったからです。03年発行分もプレミアムがわずかに8%で、非常に有利な条件と見られます。
この結果、最終的には、現在の優先株資本の代わりに、普通株資本3000億円と2063〜2175億円の資本剰余金(消却益)が発生し、実質的な株主資本比率で丸紅、伊藤忠を抜き、三井物産に肩を並べます。
問題は、その代償として、3000億円のMSCBがどのくらいの発行株式増加につながるかです。
仮に先週終値の727円で転換が進むとすれば、4億1265万株増加です。
もし627円なら4億7846万株増加、もし827円なら3億6275万株増加です。
したがって、上記2の5200万株と合わせて、発行株式数は4億株〜5億株強増加すると考えなければいけません。現在の発行株が約4億株ですから、2〜2.2倍に増加するわけです。(希望的な観測ですが、画期的ともいえる超大型MSCBなので、野村証券主導で内外の機関投資家の実需を集めて、株価堅調の中で転換が進むのではないかと予想します)


昨日発表された会社の今期予想は1株利益121円です。発行株が2〜2.2倍に増加することを織り込めば、1株利益は55〜60円になり、これに三井物産のPER12.4倍を掛けると、682〜744円になります。伊藤忠、丸紅はもっと低いPERですが、希薄化後のバランスシートの良好さを考慮すれば、双日のPERは2社より高くてよいはずです。


結論的に、大規模な希薄化の決定と、優先株買い入れのため今期の復配が微妙になったことにより、双日単独では大きな上値が考えられなくなったといわなければなりません。ただし、企業内容が抜本的に正常化することを評価すれば、やや時間をかけて実質PER14倍の800円台乗せは期待できると考えます。


<付記>来週はレポートを休みます。