(第9回)正念場を前にして


1月23日に投資顧問業の登録が完了し、2月1日付けで第1号レポートを出しましたので、この仕事を始めてからおよそ2か月を経過したことになります。
私の業務は、毎週レポートを出すことと、助言会員に運用のアドバイスをすることの2つですが、いずれも黒田電気を最初に鳴り物入りで勧めたことで、大きな困難が生じました。株に予想外の上げ下げはつきものとはいえ、他の銘柄より株価位置からの安心感がきわめて高いと思い込んでいた黒田電気の下げ方は、まったく想像を絶するもので、私の内心の混乱が、助言活動はもとより、毎週のレポートの書きぶりにも影響してしまいました。
第5号のこの欄の表題の「何をどう考えるべきか」などは、何をどう信じてよいか分らなくなりそうだった当時の自分そのままです。先々週の「アナリストは株のプロか?」や先週の「株価は株価に聞くものか」も黒田電気を大きく意識しています。


読者の中には、黒田電気のことをくだくだ聞くために金を払っているのではないぞと苦々しく思われた方もいらっしゃったことでしょう。私も2か月がたち、ようやくあまりにこだわりすぎていても仕方がないと思うようになりました。
これから5月中旬の決算発表にかけて、黒田電気がなぜあれほど急落したのか、妥当な株価水準がどのへんなのかがある程度明らかになってくるものと思われます。それは黒田電気を買っていただいた会員の方と私にとって重大な問題ですが、現時点では、これ以上こだわっても思考が前に進みません。するべきこと(余裕がある範囲での買い増し)をしたうえで、天命を待つという心境になりつつあります。 


さて黒田電気に限らず、相場全体にとっても4月は大変な正念場になると思われます。日柄および相場の自然な流れからして、4月が方向感のないまま過ぎることは考えにくく、1〜3月が天井期に特有の高値波乱だったということになるのか、それとも先高に向けての踊り場だったということになるのか、すべての投資家にとって最大の関心事に一定の結論が出ることになりましょう。
目下のところ、先進国の諸市場の動向や、即日配当落ちを埋めた日経平均の動きを見れば、4月は大いに明るいと期待できそうです。しかし、内需関連、ハイテク関連、新興市場銘柄を問わず、信用買い残高が積み上がり個人投資家の期待が高いと見られる銘柄の多くは、高値更新とは程遠く活力のない状態が続いており、5兆円台半ばで高止まりしている信用買い残の行方を思うと漠然とした不安感が漂います。
現時点の私の考えは次項で述べますが、平均株価の堅調と市場出来高(売買代金)の萎縮が4月も並存し続けることは自然な現象としてはありえず、なんらかの結論が近いうちに出ると考えるべきでしょう。


ところで、私の新事業に賛同してくださった会員の方は、次の2通りに分かれます。
第1のタイプは、判断は自分でするので、結論はさておき、思考のプロセスをきちんと示してほしいとおっしゃる方です。
第2のタイプは、説明はよいから、結論だけ示せとおっしゃる方です。
私は自分の仕事を長い眼で成功させたいと思っています。だから、成果を焦るつもりはありませんが、相場情勢を考えると、4月は両方のタイプの会員に対して、会費を払う価値を認めてくださるかどうかのたいへんな正念場になりそうです。