(第3回)下げた株にどう対処するか


先週末から、私の注目銘柄である黒田電気をはじめとして、様々な銘柄の急落が目立っています。下げれば、人間は不安になります。そして、不安にならず、平気でいることが必ずしもよい結果を生むわけではありません。
下げへの対処は難しく、もっとも判断力を迫られる瞬間といえます。


株価が下がるのに、大きく分けて2通りあります。1つは、市場全体の下げに連動しての下げで、程度の差はあれ、どの銘柄も持っている市場リスクです。
もう1つは、銘柄の個別要因による下げですが、これを分解すると、①企業の内容や環境になんらかの変化が生じたことを織り込む下げと、②需給要因や単なる心理要因による一時的な下げとに分かれます。しかし、実際には、①と②はない混ぜになっており、①と②の区別をすることは困難です。


第1号レポートで注目した黒田電気を例にとれば、決算発表をきっかけに急落したのですから、①が株価の焦点になったことは疑いありません。決算の数字と一部のアナリストによるレーティング引き下げが伝わり、①の変化を感じた人が売りを出し、それが下げるきっかけになりました。
しかし、決算発表から、①の変化を感じなかった人もいます。客観的に判断して、決算発表の内容自体は、四季報等ですでに周知の収益環境を示すもので、黒田電気のファンダメンタルズに大きな変化が生じたことを示してはいないはずです。(決算発表によって変更された一部のアナリスト意見は、眼前の数字にこだわりすぎているようです)
では、黒田電気の今回の下げは、一部の投資家が期間利益のわずかなぶれと一部のアナリスト意見に慌てて売りを出し、その売りが売りを呼ぶ結果になったのだから、②の要因による下げだ。だから、いずれ修正されると考えてよいのでしょうか。そう考えて、簡単に下げた事実を否定できるかというと実はそうもいきません。


株価はおうおうにしてミスプライスを出現させる一方、驚嘆すべき先見性を発揮します。下げ始めたときには②に見えても、あとになって①と分った、すなわち、ファンダメンタルズを正当に踏まえた下げだったということはよくあるのです。だからこそ、冷静な投資家は、株価が下げるときは慎重になります。投資スタンスによっては、ロスカットを実行する人もいます。
ある銘柄が2000円前後で推移していたのに、突如1600円に下落した場合、投資家はそれを見て安いかもしれないと思う一方で、2000円というこれまでの株価水準に誤りがあった(もしくは異変が生じた)のではないかという疑念を抱きます。
株価の下げは、それ自体が多くの投資家に企業価値についての疑念を膨らませ、それまであった市場のコンセンサスを根本から揺さぶるのです。


株価が下げるということは、真の企業価値がどのへんにあるかが、普段以上の重さで問われることです。そのような中で、下げた事実を謙虚に受け止め、株価波乱の局面で自分の答えを出し、行動することは難しいことです。投資家のすべてがその難しい局面で行動を起こす必要はまったくないでしょう。しかし、少しでも多くの投資家が自分の答えを市場に提出することが、結果的に企業価値をより正しく株価に表すことになることは疑いありません。


株価は、短期間で見れば実に気ままで、まるでパチンコの玉ですが、長い眼で見れば合理的な企業価値の判断(フェア・バリュー)に整合します。私は、自分の判断が正しく情報を踏まえたものかどうかをつねに自省しながらも、眼前の株価に振り回されず、自分自身の答えを明確に出していきたいと考えています。


<付記>黒田電気をはじめハイテク関連への強気方針を継続しています。