(第2回)儲けの評価は難しい。されど



去年1年間で日経平均が40.3%上昇し、多くの投資家が潤いました。ほくほくとしている人もいれば、そのわりに自分の儲けは少なかったと不満を感じている人もいるでしょう。
私自身もそうですが、儲けの大小で喜怒哀楽を感じたり、他人の儲けに焼餅を感じたりするのは、人間ですからある程度やむをえません。ただし、長い眼で見た場合、自分の「儲け」の量ではなく質を、冷静に考え直してみる必要があります。


たとえば、去年信用買いをしていた人は、平均株価と同じ程度の成績で自己満足していてはいけません。仮にその人の信用買いが持ち株の2倍の水準だったとすれば、去年は資産が120%増加していて普通なのですから。そうでなければ、人の3倍ものリスクを負担した意味がなかったと猛反省する必要があります。新興市場株や仕手系株など、リスクの高い銘柄を中心に運用した人についても同じことがいえます。


「手段はどうであれ、儲かったのだからいいじゃないか」と思う人がいるかもしれません。信用買いやハイリスク銘柄で運用して、たとえば去年60%資産が増えた場合、普通の人より20%分多く儲けたのだから得したというわけです。
しかし、私の経験では、そう考える人は長い眼では必ず失敗します。
幸いにして通り過ぎたリスクを、結果オーライで済ませてしまう人は、好成績が続くにつれ、知らず知らずのうちにリスクを侮るようになります。だから、おうおうにして株価が天井をつけるときに、強気に慣れきっていて、そのあとのダメージが致命的なものになりやすいのです。
信用売りや先物売りなど逆張りで好成績を続けていた人の中に、去年、相場を侮ったため、一度の失敗で破綻に追い込まれた例があったことを他山の石にすべきです。


儲けは、そのまま儲けと考えるべきでなく、自分の負担したリスクを割り引いて考えなければなりません。だから、投資家によっては、銘柄の選び方とか保有の仕方で非常に手堅い投資スタイルを一貫しているなら、たとえ去年20%しか資産が増えていなかったとしても、大成功と自己評価し満足していてよい場合が当然あります。
 加えて、成績を本当に評価するためには、資産の配分がどうだったのかという点も考慮しなければなりません。たとえば、値上がり率は高くても、相場観を間違えて、いつもの年に比べて少ない金額しか株に投入していなかったのなら、その人は、資産配分で大失敗したといわなければなりません。


それやこれやで、儲けを客観的に評価するのは難しいことです。運用成績の評価基準をどうするかということがアナリストの研究課題になっているほどです。
実は、私も助言会員からいただく成功報酬のことで悩みました。儲けを厳密に測ろうとしたら、ややこしくなります。結局のところ、私はその点はアバウトに考えることにしました。だから、儲けの額は顧客自身の申告でいっこう構わないのです。


大切なことは、3ヵ月や1年間の儲けの計算ではなく、長い眼で財産が増えるかどうかです。そして、その鍵を握るのは、リスクに対する見きわめをどう持つかということです。自分が欲しているリターンと負うリスクとのかね合いをきちんと把握していれば、長期的には必ずよい結果につながるというのが私の信念です。


<追記>弊社今週のレポートの投資方針は、先週と基本的に同じです。日米のハイテク株が上がらなければ、平均株価の大幅上昇は望みにくいという思考の道筋を述べています。