(第35回)NN倍率の歴史


NT倍率とよく似た言葉で、NN倍率という用語があります。NT倍率は、日経平均TOPIXの比率を示すということで意味が定着していますが、NN倍率のほうは、まだ意味が定まっていません。
調べたところ、次の3つの意味で使われています。
日経平均NYダウの比率
NYダウとナスダック指数の比率
③ 日経225と日経300の比率
今回は、①の意味で表題に掲げました。つまり、日経平均NYダウとの比率の歴史的な変遷について考えてみたいと思います。


1949年5月16日に東証取引が再開されたとき、主要225銘柄の単純平均値は176円21銭でした。これが日経平均 (当時は東証ダウ)の記念すべき最初の数値になったわけですが、その日のNYダウは175.76ドルでした。つまり、通貨単位を無視すれば、両指数の比率はほぼ1対1で、NN倍率は偶然にも1.00で誕生したのです。
その後、ドッジラインによる金融引き締めで、翌年には0.5を割るところまで日本株が下落したところ、その直後に朝鮮戦争が勃発し、特需で日本経済の復興が始まり、NN倍率は長期上昇トレンドに入りました。
特に70年代における倍率の上昇はめざましく、NYダウベトナム戦争の泥沼化した60年代後半から82年まで16年間にわたって1000ドルを上値とする長期ボックス相場を形成したのに対し、日経平均は74年に5000円台(NN倍率5倍超)をつけ、81年には8000円台(同8倍超)をつけました。また、87年のブラックマンデー以降も、日本のバブル進行により倍率が上昇、89年には14.35倍に達しました。
つまり、日経平均は、戦後の40年間でNYダウの成長を14倍も上回る成長を遂げたわけですが、この14倍ものアドバンテージがわずか13年後には消失してしまいます。日経平均が7000円台に売られた03年4月、NN倍率は0.92という53年ぶりの安値をつけたのです。
それから3年後、日経平均が17,563円の高値をつけた4月7日のNN倍率は1.58で、直近10月2日現在は1.39です。昨年後半の日本株高で拡大した倍率が、日本株のPER割高論台頭とNYダウの堅調で押し戻された形です。


さて、NN倍率は今後縮小拡大のどちらの方向に向かうのでしょうか? 
さらに縮小し、デフレ最盛期と同じく東証再開時の1.00の方向に向かうと考えるのは、日米の経済実力の推移から見て不自然すぎると思われます。
東証再開の49年には、日米の1人あたりのGDPはケタが2つくらい違っていたはずです。それがバブル期にほぼ並び、一時日本が上回ったのは紛れもない経済事実です。その後、10年規模の停滞に見舞われたとはいえ、それまでの40年間の米国に対する超過成長が全部ふいになったわけではありません。昨年実績で米国の1人あたりのGDPが464万円に対し、日本は394万円と85%の水準をキープしています。
今後、日本経済がデフレを完全に脱却し、NN倍率が日米の経済実力を正当に反映するようになれば、バブル期の14倍台は買われすぎとしても、少なくとも70年代前半の3倍くらいの水準までは戻ってよいのではないでしょうか。(日経平均NYダウも、市場全体を厳密に反映する指標ではないので、数学的な根拠があるわけではなく、あくまで大まかな考え方にすぎませんが)


このところ、NYダウが連日のように史上最高値の水準に突っかけているのに比べて、日本市場のムードは冴えません。多くの投資家の気分を重くさせているのは、米国景気悪化→輸出悪化→日本景気悪化の懸念や、また、日本株PER割高→外人売りの懸念ですが、加えて、根本的に上値を阻む要因になっているのは、昨年の日本株の上昇率が先進国中もっとも高かったという事実です。
先週の<分析>で述べたとおり、それらの弱気には時間的な限界があり、タイミングの問題にすぎません。
長い時間で見れば、日本株は米国株に対してパフォーマンスで優るはずですし、やや短い時間で見ても、日米相場のタイムラグは最大1ヵ月半程度が過去の経験則です。米国市場が上昇しても下落し続けた90年代と違い、米国株の堅調が続く限り、日本株はやがてそれ以上に強くなると考えておいてよいと思います。